グーグルに対する訴訟を起こした原告グループに入っている全米出版社協会の理事長を務めるリチャードサーノフは、業界最大手ランダムハウスでコーポレート、つまりは経営企画を担当しているエグゼクティブだ。一方、本の電子書籍化を目指すグーグルプリントのプロジェクトを立ち上げたメンバーのリーダーであるアダムスミスは元ランダムハウスのIT/ニューメディア部門で将来を有望された若手幹部であり、サーノフの直属の部下だった。いわば、自分の右腕だった人物がランダムハウスから西海岸のグーグルに引き抜かれていったときから、サーノフはグーグルで起こっていることを把握していたはずであり、話は通じていたものと考えるのがスジだろう。この「サーノフ」という名前にピンときたら、アメリカのテレビやラジオの歴史にかなり詳しい人だろう。初期のパイオニアの一人だったデイビッド・サーノフという名前を知っているのだから。彼は、キーTV局のNBCの創設者でもある。この人物がリチャードの大叔父にあたる。さらに、彼はもともとランダムハウスの親会社であるヨーロッパ最大のメディアコングロマリット、ベルテルスマンが1998年にランダムハウスを買収した際に、CEOトーマス・ミデルホフの指揮で動いていた人物だ。要するに、たかが一介の出版人と侮るなかれ。これ以上はない規模で「マス」メディアを見つめてきた男なのである。