ディオールが単なるクチュールメソンという立場から世界を擁する一大モード帝国にまで、どうやってビジネスを発展させることができたのか、そこを論じてみたいと思います。まず忘れてならないのは、ディオールというデザイナーの今でいうトレンド・セッターとしての影響力の大きさです。彼が現役として活躍したのは47年のデビューから、イタリアの温泉地でその生涯を閉じる57年までのわずか10年足らず。シャネルやバレンシアガに比べれば、その現役時代は驚くほど短い期間です。しかしながら、ディオールがその短期間に発表したAライン、Hライン、Yラインというアルファベット・ラインに代表されるシーズンごとのスタイルは、それこそ世界中のモード・デザインに影響を与えていったわけなんです。今のファッション界にたとえれば、トム・フォードとミウッチャ・プラダ、マルタン・マルジェラと川久保玲、それにドルガバ(ドルチェ&ガッバーナ)からニコラ・ゲスキモールまで全部ひっくるめたくらいのトレンドセッター的役割をディオール一人が担っていたといっても過言ではないはずです。